部下育成とは?|失敗・成功のポイントを解説

部下育成の基本
部下育成とは、「部下が自ら学び、成長できるよ支援すること」です。これは管理職に期待される重要な役割の1つで、改善点を指摘して仕事の質を高めたり、やり方を教えたりする、いわゆる「指導」がまず思い浮かぶ方もいるかもしれません。ただ、これらは短期的な成長にはつながるかもしれませんが本質的には部下の「育成」につながりません。
なぜ今、指導ではなく育成が重要なのでしょうか。まず、誤解してはいけないのは、指導すること自体は不要だとか間違っているというわけではないということです。短期的な結果やすぐに修正が必要な場面はあります。ただ、部下育成は企業の将来に直結するので、指導=育成と認識してしまうと企業の持続的成長は望めません。逆に、会社の戦略や事業業績に貢献できるメンバーがたくさん育てば、組織全体の成果は飛躍的に伸びていきます。
また、生産年齢人口の減少が見込まれているので、若手や優秀層の獲得はさらに難しくなり、ましてや上司が年上、部下が年下ではなくなってきており、成長=若手という式が必ずしも成立するとは限りません。部下育成は企業にとって欠かすことのできないテーマであり、その重要性は今後も高まっていきます。しかし、これらの事情を認識し、実際に部下育成のためにいろいろな施策を試みたが結果につながらず困っている人もいることでしょう。
そこでこの記事では、部下育成に失敗する原因や成功させるポイントについて紹介していきます。部下育成に悩んでおり効果的な育成方法を探しているマネジャーや、マネジャー達に部下育成能力を高めてほしいと考えている経営者、人事部の方はぜひ参考にしてください。
部下育成の3つの課題
ここでは部下育成がうまくいかない組織でよくある課題を紹介します。
適切な目標設定ができていない
部下の目標設定を考える際は、難易度のバランスが重要です。チャレンジングで難易度が高く、期限も短い目標も大切ですが、取り組む前にモチベーションが下がってしまう恐れがあります。実力と照らし合わせて、達成を目指して真剣に取り組めるレベルの目標を設定することがポイントです。また、その際、会社から下りてきた目標をそのまま部下に押し付けてしまうと、「目標を達成することで自分にとってどういう意味があるか?」「自分の成長や待遇、得たいものを得ることにつながるか?」を納得できないまま業務にあたることになり、部下が本気で目標達成を目指せないこともあります。
フィードバックが不適切、または足りない
部下に業務を任せっきりにしたり、結果のみで判断してしまったりすると、頑張って取り組んだ部下のモチベーションを下げることにもつながりかねません。また、部下に仕事を任せていると、ミスへの心配や作業の遅さから、自分がやった方がいいと判断してしまう場合もあるでしょう。しかしそこで上司が自ら手を出してしまったり、部下の仕事を奪ったりしてしまうと、部下が経験を積む機会を奪ってしまいます。また、自分に任せてもらえないことに対し、部下が自信を失くす可能性もあります。
間違っても、部下の人格や人間性を否定するような叱り方は絶対NGです。たとえば、部下が期限内に仕事を完了させられなかったときに、「どうしてお前はこんな簡単なこともできないんだ!」と叱ったり、そのまま仕事を奪ったりすることは人格否定ととらえられる場合もあり、部下の自己肯定感や尊厳を損なうだけでなく、パワーハラスメントにもなる可能性もあります。
上司側のスキル・知識が不足している
管理職自身のマネジメントスキルが不足しており、プレーヤーとしてのスキルや知識はあっても部下育成のスキルを持っていないことで育成ができていない場合があります。今まさに多忙で部下育成に割く時間が取れずにスキル不足に陥っている方も多いとは思いますが、景気停滞による採用抑制から、後輩への指導や相談役といった経験がないままマネージャーになり、マネジメントについて学ぶ機会がなかった方々が多いという背景もあります。
特に管理職はチームや部門の目標達成などの短期成果にくわえて部下育成や組織文化醸成などの中長期的な成果も求められます。さらに組織の人数が少ない場合は、管理職自身もプレイヤーとして活動するプレイングマネージャーとしての役割を期待されていることもあるでしょう。管理職が多忙となり、それを超える生産性向上を実現できなければ、緊急度が低い部下育成は後回しになってしまいがちです。
部下育成の3つの課題への対策
これまで挙げた課題を回避するためのポイントをそれぞれ紹介します。
適切な目標設定をするには?
管理職は組織の目標を単純にブレイクダウンして部下に渡すのではなく、部下本人のキャリアや今後の期待事項と目の前の目標達成を結び付け、部下が納得できるように協議して決めていくことが大切です。面談など部下との対話の場面を作って、上司からの成長の期待や要望を部下に伝え、部下の目指す将来像や取り組みたいテーマを本人から引き出しながら、ともに成長目標を作ることで、部下の納得感や意欲も高まります。
いいフィードバックを十分にするには?
目標達成に向けたスタートからゴールまでの間に複数回、上司と部下がお互いに結果やプロセス、進捗を確認しあう仕組みをつくりましょう。途中経過の地点があれば、間違いがあれば軌道修正できますし、目標達成に向けたポジティブな会話が生まれます。その結果事態が好転すれば上司と部下の信頼関係も生まれやすくなり、部下のモチベーション向上も期待できます。
また、振り返りの際に適切な叱責やネガティブフィードバックをするようにしましょう。部下の行動や仕事の手順でミスや間違いがあったときは、その場できちんと指摘することが大切です。特に事故や重大なクレームにつながる危険がある場合は、厳し目に叱る必要もあるでしょう。
叱責やネガティブフィードバックは、「部下の修正すべき言動を指摘して、成長につなげる」ためのものであり、部会育成の上でも大切な行為です。その際のコツは、是正すべき部下の「言動」にフォーカスして指摘するようにしましょう。行動や言動など「改善できること」に焦点を当てて、過去の失敗や起きてしまったことを責めるのではなく、未来の成長に向けてフィードバックや再発防止策について会話することが大切です。
管理職自身が学ぶ
部下育成に取り組むうえでは、「その業務について十分な知識がある」だけでは足りません。管理職自身が「教え方」を学ぶことも重要です。「教え方」はスキルであり、知識とトレーニングを通じて向上できます。
「人はどうやって学ぶのか?」「相手の特性に応じた動機づけのやり方は?」など、教え方のスキルが身に付くと、指導方法のバリエーションが増え、部下の性格や気質に合わせてよりきめ細やかな育成ができます。管理職が普段から学ぶことを習慣にしていれば、部下の学ぶ意欲にも良い影響を及ぼします。
人に教えるうえでは「教える側も常に見られている」という自覚が大切です。「テクニックで部下を操作、コントロールしてやろう」といった思惑はすぐに部下に見抜かれます。テクニックは部下育成を効果的にしたり、課題を解決したりするうえで大切ですが、同時に人格面を向上させることにも取り組みましょう。
まとめ
この記事では部下育成について、部下育成の課題や成功のポイントをお伝えしました。読んでいただいてお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、部下育成は特別なスキルが必要なのではなく、適切なコミュニケーションが部下育成のポイントです。
業務時間内で、きちんと部下と向き合ってコミュニケーションをとり、表面的な業務についてのやり取りだけでなく、部下の価値観や強み、コミュニケーションスタイル、キャリアへの考え方やモチベーションの状況などをきちんと把握することで、よりフィットした関わり方をすることが可能です。これらを把握するためには、信頼関係の構築は必須です。